電磁波の研究(新版)

改定
2023/5/27 電磁波の研究(新版)を発表

はじめに

電磁波にはいまだ解明できていない事象があります。電磁波の伝播特性について、電磁波の電磁気的特性と力学的特性を主題としています。本論は「運動している発生源から送出される電磁波は電磁的速度と発生源の運動速度が合成されて伝搬する」と考えています。一般に言われている「光の速度は一定」の論拠の一つに「連星の運行は正しく観測されている」があります。電磁波の伝搬特性と連星の運行観測について見解を示します。一方、光のドップラー現象やプリズムの屈折現象は「光の速度が変化する」ことが原因と考えます。多くの自然現象から、「電磁波は慣性を持つ」と言えます。
しかしながら本論は仮説です。運動する光源から生じる電磁波の速度を計測し、証明されなければなりません。

1.電磁波の特性

電磁波の性質は以下のように考えられています。

1)磁界と電界が振動して空間を移動する電気エネルギーである。
2)質量は無いが運動量を持つ。
3)伝播速度は環境の誘電率と透磁率によって定まり真空中では30万km/秒で一定である。
4)屈折、拡散、回折、干渉の現象がある。
5)真空及び空気、液体、透明結晶等の物質を透過する。
6)物質の表面で反射・吸収される。

以上の各項に力学的な記述がありません。力学で言う「電磁波の慣性」の研究が必要です。

2.電磁波の生成からみた伝播特性

電磁波が生成される仕組みからその伝播特性を考えます。電磁波の諸性質は電気エネルギーが波動の形で伝搬することに起因します。マックスウェルの電磁方程式は電磁波の伝播が波動であることから導かれたものです。この波動方程式は波動そのものが静止していることを示すものではありません。電磁波は電気的な発振器で生成され、光は電子が原子に直接作用するか又は原子が加熱されることにより原子を構成する電子が励起されて生成されます。いずれにしても電磁波の生成は電子の運動が元になります。一つの電子(電流)が生成する電磁波すなわち磁界は一平面内(X-Y平面)に存在します。電磁波はその平面に垂直(Z軸)の電流の周りに生成した環状の磁界として放射します。電子から派生した電磁波は電子とは独立して力学的な慣性を持つと考えます。
以降、一般の定説を「定速論」、本稿での主張を「慣性論」と呼ぶことにします。

1)電磁波の生成

交番電流が流れる方向をZ軸とするとその周りに同心円状の交番磁界Hが発生します。生成した電磁波はX-Y平面において原点Oを中心として同心円状に放射します。電界Eは磁界に対して直角に位相が90°ずれて生成します。
電磁波の速度構成を図2-1に示します。

2)電磁波の速度

宇宙空間にある電磁波の発生源の速度は静止の原点を基準とします。電磁波の速度は発生源を基準とした伝搬速度です。静止している場を基準とした電磁波の速度は見かけの速度になります。電磁波は物質と同様に空間で運動している状態で存在します。

電磁波の生成 Cv=C+V (2-1)
cv=(c^2+v^2+2cvxcos(θ))^(1/2) (2-2)
θv=atan(cxsin(θ)/(cxcos(θ)+v)) (2-3)

(小文字はスカラー)
C ;電磁波速度
Cv;見かけの電磁波速度
V ;発生源の速度
θ ;偏角
θv;見かけ角

3)電磁波の測定速度

運動する発生源と同じ座標にいる観測者には運動速度Vの影響が無いのでCv=Cとなり、地球上で発生する電磁波の伝搬速度は一定です。移動する発生源を地上で観測する場合、例えば恒星の光の見かげの速度Cv=C+Vになります。


3.電磁波の伝搬

見かけの電磁波の軌跡

発生源は電磁波速度の38%で右(X軸)に進むものとします。電磁波と運動のなす偏角θが0°から180°まで30°毎の電磁波の進行速度を図3-1に示します。図は放射角θが60°について説明しています。見かけの電磁波の速度ベクトルの軌跡は鼓型で電磁波の放射形状である円を運動方向にVだけ並行移動した形となります。

運動電磁波の速度 Cv=C+V (2-1)
cv=(c^2+v^2+2cvxcos(θ))^(1/2) (2-2)
θv=atan(cxsin(θ)/(cxcos(θ)+v)) (2-3)
見かけ速度は偏角θ=0°のとき最大で
cv=c+v
θが180°のとき最小で
cv=c-v
となります。

4.現象から見た電磁波の性質

電磁波は電気的エネルギーである磁界と電界が振動しながら移動する現象です。音や波は媒体である空気や水が移動することなく振動だけが伝搬することから音や波とは生成の構造が異なります。水の波は横波で音は縦波で電磁波も横波と考えられています。しかしながら、電磁波は進行方向への粗密波ですから、縦波と見なすのが良いと思います。ただし、偏光現象は進行方向に対して縦と横の方向の3次元振動の移動を示します。しかるにマイケルソンモーレー等の実験や連星の観測から、電磁波の速度は発生源の運動速度に影響されないと考えられていますが、そのように言えるでしょうか。

1)地上における電磁波速度の計測

光の速度はHe・Neレーザーの周波数と波長を掛けた値で299,792,458±1.2m/秒と定義されています。波長の計測に光の干渉の原理を使用するので地球の公転速度及び太陽系の運動速度の影響はありません。もし電磁波の速度が変化した場合、地球の運動速度が200km/秒とすると、誤差は1.3x10E-6となるのでその影響は無視出来ません。もっとも、「光速は光源の運動に関係なく、一定」とされていますが観測による証明はされていません。また、「一定の速度」の定義は曖昧な表現で、進行速度と横方向の運動について説明する必要があります。

2)電磁波の反射

電磁波は反射による波長の変化がないことから、完全な弾性体と考えられます。反射光は電磁波の発生と同等と見なすことが出来ます。鏡の運動速度は見かけの電磁波速度に影響しますが、運動力学で言う衝突の原理から反射前後の速度は相殺されます。

3)電磁波のドップラー効果

ドップラー効果は静止している観測者が運動する電磁波を観測するとき、波長が変化する現象です。反対に観測者が運動する場合も同様に波長が変化して観測されます。いずれの場合でも、プリズムの分光や電波受信器はその波長の変化を検出することが出来、検出器にとって発生源の移動と検出器の移動は同じ効果があります。
恒星の運動速度がドップラー効果によって計測されることは天文学にとって重要です。

4)マイケルソンモーレーの実験

マイケルソンモーレーが行った実験は、運動する地球上にある光源から発する二つに分岐した光の速度が光路差により干渉縞が現れると予想して行われましたが、干渉現象は起きなかったというものです。この実験は光源と検出器が等速で動いているので波長の変化がないこことから干渉縞は現れません。

5.天体の観測

1)天体の運動と地球の運動

観測者は運動する天体の光の伝播遅れの分、過去の状態を見ることになります。但し、今見えている天体の位置は「光差」の項の説明のように実際と同じ位置にあり、運動の影響はありません。また、観測者が動いている場合、例えば地球で日出を拝むことは約8分前の太陽を見ていることになりますが、太陽の実際の位置は見えている位置にあります。

2)光差

(1)光差の定義
一般に光差は天体と他の天体間の光の伝搬時間差で次の式で定義されています。定速論による光差の説明を図5-1に示します。

光差(定速) 光差方程式
c(t2-t1)=|r1(t1)-r2(t2)| (5-1)
光差
τ=t2-t1 (5-2)
c;電磁波の速度
t1,t2;電磁波の生成時刻と観測時刻
r1,r2;t1,t2における天体と観測点の位置

観測者R2はt2時に天体をR1の方向にあるとしています。つまり、位置R1で過去t1のにおいて発光した光がR2に到達するとしています。これは電磁波の運動が天体の運動に影響しないとした考え方です。



(2)慣性論による光差
本論による光差を図5-2に示します。
光差(慣性)
定義式
cv(t2-t1)=|r1(t1)-r2(t2)| (5-3)
τ=t2-t1 (5-4)
cv=(c^2+v^2+2cvxcos(θ))^(1/2) (5-5)

cv;電磁波のみかけ速度
v;天体の運動速度
θ;偏角

R1,t1で発生した電磁波Cは見かけの速度Cvの軌跡でR2,t2に至り、観測される天体はR1'の方向に見えます。


3)光行差

光行差は観測者が運動する場合に起きる現象です。電磁波は一定の光路を伝播しますが受信者が移動するために見かけでは光路が傾いているように観測されます。この現象は光差現象とは独立です。

光差光行差 光差角
δ=atan(x/l) (5-6)
天体の移動距離
x=vxt (5-7)
天体までの距離(N光年をKmで表した値)
l=Ns (5-8)
=Nxcx365x24x3600 (5-9) 光行差角
φ=atan(v/c) (5-10)

c;電磁波の速度
v;観測者の運動速度
N;光年

光差と光行差の影響
地球の運行速度は30Km/s、光速cは30万Km/sであるから光行差角は約20"で観測上の考慮が必要ですが、天体までの距離が10光年以上の天体が50km/sで1年間の移動する光差角はほぼ0"ですので観測に影響しません。

4)連星の運行

「連星の公転周速が観測を乱さないから光の伝搬速度が一定である」とされていますが事実はどうなのでしょう。連星A,Bの公転に伴い変化する視線方向速度と反対方向速度の影響がどのように観測されるかを計算します。

連星の運行 図5-1は連星の構成と光の伝搬速度を示します。
視線方向の光速はCv1=C+V、反対方向の光速はCv2=C-Vで光の伝播速度差は2Vとなります。また、公転周期Pの一周期間で伝播する距離の差は2VPとなります。

図5-5は連星の運行周期に同期して進行する光の伝搬を示します。
連星の光の伝播

連星重畳数の計算

運行速度差    ; Vd=2V (5-11)
離隔距離     ; Ld=2VNs (5-12)
1周期の伝搬距離 ; Lp=CP (5-13)

重畳数(伝搬距離差Ldの1周期伝搬距離Lpに対する倍数)
U=Ld/Lp
=2VNs/CP (5-14)
V;公転周速
C;光速
Ns;光年(距離)
P;公転周期

代表的な実視連星、分光連星の緒言(基礎データは理科年表による)

実視連星 分光連星
連星A,B おおいぬ座α星 おとめ座γ星 アンタレス ふたご座カストル ヘルクレス座 ケンタウルス座 小マゼラン星雲 スピカ ペルセウス座 ふたご座
αCMa γVir αSco αGem HerX-1 CenX-3 SMC X-1 αVir βPerAB α2Gem
光年Ns (年) 50 171 878 51 19,560 23,080 195,600 350 80 50
周期P(日) 18,250 62,415 320,470 2.93 1.70 2.10 3.90 6.02 5.02 4.02
周速V Km/s 23.7 11.7 3.7 31.9 135 415 299 120 121 122
重畳数 U 2.7E-05 4.2E-06 3.8E-06 1.4 3781.4 11113.9 36526.7 25.5 4.7 2.5

実視連星は重畳数がほぼ0で文字通りあるがままの姿を観測できることが分かます。重畳数が小さい分光連星は 宇宙望遠鏡により近年、多重連星として識別されるようになりました。一方、重畳数が大きい連星は精密な スぺクトル観測により、短い周期で高速回転している連星として認識されています。
分光連星の公転周期がきわめて短いのは何を意味するのでしょう。2連星が複数(多重)に見えると考えることが 出来ます。パルサーと呼ばれる連星がありますが数億光年の彼方です。その場合の重畳数は指数的になり、スペクトルは パルス状になると考えられます。結果として、連星の運行は光の伝搬速度に変化をもたらしています。遠方にある 連星ほど影響は大きいのです。

5)銀河の回転曲線

銀河の回転速度を観測することは電磁波の伝播特性を検証することになります。観測される銀河の回転曲線はケプラーの法則から逸脱していることが判明しています。この研究はその原因を「電磁波の伝搬特性」に基づいて解明します。

(1)銀河回転曲線の考え方

銀河の回転速度はケプラーの法則に従います。銀河から出た光は長大な距離、数千万年かかって到達するので観測される銀河の形は厳密には現在の姿でありません。銀河の回転曲線を「電磁波の慣性論」を適用して計算します。 電磁波(光)の伝搬の計算式は前項「2光差」を参照してください。
電磁波の速度は発光体の運動速度vと電磁波固有の速度cの合成されたものです。
電磁波は発光体の運動と光の伝播との合成されたベクトルとして扱います。
速度の計算  

(2)銀河回転曲線の概要

図5-1は銀河回転曲線の概要を示します。
銀河回転曲線の解析概要 説明図は銀河を右方上から見ています。視線平面は銀河平面に対してα角傾斜しています。 銀河から地球までの距離をy万光年、銀河の半径をR万光年とします。 銀河は半径rにおいて回転速度vで左回転しているとします。 銀河の回転速度はケプラーの特性に従います。
銀河と地球間の光の伝達遅れ時間に銀河が回転する角度を遅れ角θとします。
Qで発光する回転半径に直角成分はy万年後にP点に到着します。一方、視線方向の光は遅れ角θ方向成分です。


銀河回転面の座標は視線面に対して遅れ角θだけ右回転します。一方、視線方向の速度vsは半径rに直角です。Q点で発光する光の速度vgはケプラーの特性に従います。
結論はQから出た視線方向の光がPで観測されることになります。
また、視線面と銀河面の傾斜角αを補正します。

(3)銀河曲線の計算

実際の伝播速度はC+vですが、計算では光本来の速度Cを省略します。図5-2は回転曲線の説明詳細です。

銀河曲線の詳細 L=vg/cxy (5-1)
θ=vg/cxy/r (5-2) (ケプラー曲線)
rg=rxcos(θ) (5-3) vg=K/rg^0.5 (5-4) (視線面における視線速度) vs=vgxcos(θ) (5-5) v=vsxcos(α) (5-6)
L;y年間の伝播距離(PQ間距離)
θ;y年間の遅れ角


銀河半径rgと遅れ角θの式は近似計算です。回転の中心では誤差が生じますが定性的には影響ありません。

(4)回転曲線のグラフ

計算結果を図5-3銀河回転曲線グラフで示します。 銀河曲線のグラフ 縦軸は回転速度(km/s)
横軸は銀河半径(万光年)>br> グラフの1-6系列のグラフ
1系列;ケプラー特性速度
2系列;100万光年
3系列;300万光年
4系列;500万光年
5系列;1,500万光年
6系列;5、000万光年
7系列;1億光年


近距離にある銀河の回転曲線はケプラー特性に似ていますが、遠方の銀河では変形して見えます。銀河の中心部では光が観測されないことが分かります。計算式はケプラー係数を一様としていますが、実際は半径方向でケプラー特性は変化と考えますので観測値は波打つ形状となるでしょう。

6)水星の運行

水星の太陽面通過と近日点の移動について
水星は約50km/sで太陽の周りを公転しています。水星の太陽面通過時刻は光の伝播遅延約6分を考慮する必要ありません。水星は黒点となって見え、水星の周りの太陽光を観測しているからです。近日点移動の現象は運動速度による掩蔽時刻のずれが原因かもしれせん。これは課題として提起します。

7)木星の衛星の食

木星の衛星の食の開始または終了時、視線方向速度は速くまたは遅くなりますが、横方向速度の変化はありません。

6.地上で見える現象

磁界を電流が横切ると導体に力が発生しますが、これは運動する電流が磁場を生成するときに生じる反作用です。電磁波を出しているアンテナが運動することは高周波電流が流れている導体が運動していることと同様に電流はアンテナに力を生じさせます。すなわち、運動するアンテナ電流は電磁波に運動量を与えることになります。発生源の進行方向と横向きに進む電磁波が「光速度一定」の原則で置き去りにされると不都合なことが起きます。一方、発生源の運動速度が電磁波の進行速度に与える影響は無視できるくらい小さいですが、スピードガンやアナログテレビ受像機には影響があります。

1)大砲の照準

戦艦の大砲は40km先の標的を目標にすることが出来ます。照準の計算で地球の運動により1/2,000の誤差が発生すると40km先では20mとなりますががそのような事実はありません。大砲の照準の計算に地球の運動は影響していません。

2)放送波の伝播

テレビやラジオの放送波は全く地球の動きの影響を受けていません。レーダ観測装置やマイクロ波の伝送に地球の運動の影響があったとしたら現代社会は成立しないでしょう。

3)GPSにおける距離計測

人工衛星と地上との距離計測計算に用いる電波の伝播時間は見かけの電磁波の速度で計算すべきでしょう。実際には電磁波の速度で計算するので誤差が生じますがその他の誤差としていると考えられます。

4)日本標準時(JJY)

標準時間の発信局は佐賀県と福島県にあります。それぞれから発信されている60HZ、40Hzの標準電波を受信した波形には12時間周期で位相の変化が観測されたという研究があります。高精度情報を送っている電波は地球の回転運動に伴う運行速度が影響していると考えられます。

7.検証実験

1)絶対静止系の検出
観測装置が置かれている場所の運動を知るためには電磁波の見かけの伝搬速度を計測することになります。運動する電磁波の見かけ速度を計測することはいまだ行われていません。
2)電磁波の見かけ速度の計測
電磁波の見かけ速度を計測する方法はあるのでしょうか、改めて計測実験を提案します。
離れた二地点に時計を置き、宇宙から来る電磁波の通過時刻を計測する方法で放射する光の見かげ速度を計測すれがば可能ですが、そのような装置を製作できるでしょうか。最近”KAGURA”が運転開始しましたが本件について期待できるかもしれません。

8.おわりに

本論の発想から長い時間が経ちましたが結論を見ないまま今日に至ります。根本的に間違っている可能性はありますが実証出来ることを願っています。多くの研究者に御意見・評価を求めたいと思います。

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